【5月】勉強会開催

2025年05月23日 20:00


日付:NY5/23(金)20:00- JP 5/24(土)9:00-

@Zoom meeting room (リンクはご参加登録頂いた方に開催当日に直接お送りさせて頂きます)

発表者:齋藤義修さん 【大阪大学大学院医学系研究科 助教  】

Postdoctoral Fellow, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, The Tisch Cancer Institute, Division of Hematology/Medical Oncology

タイトル:肝臓の病態進展と恒常性維持における肝星細胞の多面的役割

要旨:

肝臓は、代謝、解毒、免疫調整など多岐にわたる機能を担い、生体の恒常性維持において中心的な役割を果たしている。肝星細胞(hepatic stellate cell: HSC)は、肝臓に常在する線維芽細胞様の細胞であり、全肝細胞の約5〜8%を占める。従来、HSCは主に肝線維化を担う細胞として知られ、肝線維化は肝硬変や肝細胞癌に至る慢性肝疾患の重要な病態基盤である。

我々は、ヒトおよびマウスの慢性肝疾患モデルを対象に単一細胞RNA解析(scRNA-seq)を行い、HSCの多様な機能状態を同定した。その結果、病的環境に応じて誘導され、肝発癌を促進する**myofibroblastic HSC(myHSC)と、逆に線維化の進行とともに減少し、肝発癌を抑制するcytokine-producing HSC(cyHSC)**という、機能的に対照的なHSCサブセットを明らかにした(1)。

一方で、HSCは古くからビタミンAの貯蔵細胞として知られていたが、それ以外の生理的役割は長らく不明であった。近年我々は、HSC由来のR-spondin 3(Rspo3)が、肝再生を促進し、肝の恒常性維持に寄与することを見出した(2)。この知見は、HSCが線維化以外にも生理的な肝機能を積極的に支える役割を担っていることを示している。

以上より、HSCは病的・生理的な環境に応じて肝臓の機能を動的に制御する中核的な細胞であり、その多様な役割を標的とすることで、肝疾患の制御や再生医療への応用が期待される。

1. Filliol A, Saito Y, et al. Nature. 2022 Oct;610(7931):356-365. PMID: 36198802

2. Sugimoto A, Saito Y, et al. Nature. 2025 Apr;640(8059):752-761. PMID: 40074890